神谷健さん エンジニア(サーバーサイド)
2013年入社。サーバーサイドの開発を担当。抜群の安定感と技術力でみんなからは神と呼ばれている。見た目のプロデューサーっぽさにも定評がある。
姥義信さん プランナー
2014年入社。プランニング全般を担当。常にVネックを着用。コンシューマゲームの開発会社にプログラマーとして就職し、後に企画にコンバート。前職時代、スーツで通勤したら歌舞伎町でスカウトされたことも。
西村拓也さん エンジニア(クライアントサイド)
2014年入社。クライアントサイドの開発を担当。コンシューマ開発出身。入社してすぐにLTで笑いをかっさらい注目される。専門学校の教員の経験もありチームメンバーからは親しみを込めて先生と呼ばれる。
金山圭輔さん ディレクター
2011年入社。ディレクションのほか色々担当。ゲーム開発歴15年。元コンシューマゲーム開発出身で、スクリプター ~ プランナー ~ ディレクター ~ プロデューサーと軒並み経験。
冨田篤さん デザイナー
2012年入社。アートディレクション・UIデザインを担当。前職では放送局の番組サイト制作していた。野球で例えると内外野守れて進塁打が打てる7番セカンドくらいの立ち位置。

発売から25周年を迎え、今なお多くのファンに愛され続ける競馬ゲーム『ダービースタリオン』シリーズを、ドリコムがスマートフォンゲーム『ダービースタリオン マスターズ』としてリメイクし、2016年11月にリリース 。その制作秘話を、開発メンバー5名が80分間にわたって熱く語った。

1. かつて「ダビスタ」に夢中になったメンバーが集結

『ダービースタリオン マスターズ(ダビマス)』の制作にあたって、久々の新作ということもありプレッシャーは感じましたか。

(プランナー)
プレッシャーというよりも、最初にこの話を聞いた時には思わずテンションがアガりました。
過去の名作ゲームをスマートフォン向けにリメイクして出すというのは、いまや大きなトレンドですよね。そして、「ダビスタ」といえば、競馬ゲームの代名詞。誰もが知っているナンバーワンシリーズをうちでやらせてもらえるなんて光栄ですよ。
西村(プログラマー)、金山(ディレクター)
我々は当時「ダビスタ」を結構やり込んでいたので、この仕事が来た時には「ぜひ」と思いましたね。
金山(ディレクター)
かつてユーザーとして「ダビスタ」をプレイしていた面子が集結したので、これはいいものができるんじゃないかと思いました。初期段階で手応えはありました。

開発チームには、「ダビスタ」ファンや競馬マニアを集めたと聞きました。

冨田(デザイナー)
それはないです。数十人規模のチームなので、全員が「ダビスタ」・競馬マニアなんてありえません。また、競馬に詳しくても、ゲーム開発に生かせないと意味がないと思いますし。「スマホに落とし込んだ時にどうなるか?」を考えられる人であることが重要です。

2. 守るべきは原作の持つ「ダビスタらしさ」

姥:
最初にオリジナルの「ダビスタ」をひたすらプレイしたんです。延々とプレイして、残すべきところを考えていく。それで「まずはオリジナルにある要素をそのまま全てを乗っけよう」と決めたんですよ。ロジックも含めて。ところがそれが意外と大変で、開発チーム全員で苦労して。
神谷:
旧作を再現するって実は難しいんだよね。一定水準の再現度がないと、ファンに満足してもらえない。一方で、完全再現するだけだとそれはコピーになっちゃう。ゲームのつくり手としてはつまらないし、我々の介在価値がないよね。原作を踏襲しつつ、その上でどうやって我々が実現したい価値を入れていくかが重要。
今回は、一旦オリジナル版を全てスマートフォン上で再現した後で、どうやって2016年仕様に変えていくかっていうつくり方をした。だから逆に、オリジナルよりも工数のかかっている部分も多い。

3. 過去の仕様がわかっても、必ずしも踏襲はしない

金山:
開発当初は、過去の「ダビスタ」のロジックを教えてもらえると考えていましたが、なかなかそうもいかなくて苦労したところもあります。
姥:
ゲームの表面的な部分は過去の攻略本を読み漁って勉強したんですが、内部が全然わからない。こうプレイするとこうなる、という原因と結果はわかるものの、それを導くロジックがブラックボックスでした。だから神谷さんと一緒に当時の開発者の元を尋ねて…。
神谷:
単刀直入に「仕様を教えて下さい」と頼んでもなかなか引き出せないので、やっぱりそこはエンジニア同士の会話で。自分で組み立てた上で「いま、これこれこうやってつくっているんですが、いかがでしょう?」ってお伺いを立てると、「いやいや、そうじゃないんだよ」と返ってきて教えてもらえる。
さらにそこを一歩突っ込んで、「どういう意図を持ってその仕様になったんですか?」と裏事情もしっかり聞いてきて。

それをそのまま実装したんですか。

姥:
逆説的なようですが「これがこうなっているのには、こういう理由がある」というロジックさえわかれば、原作の世界観なり本質なりを実現するために、方法を変えることだってできる。仕様そのものではなく、オリジナルの意図をいかにスマホ版に反映させるのか、当時やり込んでいたユーザーさんの想いをいかに蘇らせるのか、その点に腐心しました。

4. ハイスピードで走り続けた

開発チームの雰囲気はどうでしたか。

金山:
チームの雰囲気は最初から最後まであまり変わりませんでした。
神谷:
最初から最後まで修羅場(笑)
西村:
そうそう、ずっと修羅場だったから、ペースは変わらない(笑)。でも、雰囲気よかったですよね。
神谷:
全速力だと息切れしちゃうから、その直前のベストなスピードでみんな走り続けたよね。全てが試行錯誤で、簡単な仕事じゃなかった。「こうすればできるよね」って道がなくて。

5. スマホというデバイスゆえの制約を越える

ファミコン版から変えたところ、変えなかったところは?

姥:
変えたくなかったことで一番大きいのは、ファミコン時代の「ダビスタ」にあったプレイの快適性を保つってことです。ファミコン本体の持つ操作性のよさというのはやはり大きい。
ゲームって豪華になればなるほど、容量が増えていく。だけどスマホゲームって通勤時間などの空き時間に片手でやるもの。だからサクサク進むことは必須条件です。機能が増えてきてもその快適性は守りたい、と最初から決めていました。
神谷:
ファミコンのコントローラーだからこそできていたことを、タップだけでやらなきゃいけない。大きな制約だよね。
冨田:
スマホになると十字キーとABボタンがなくなりますからね。。
また、初期段階で縦持ちのアプリになる想定だったので、従来のコンシューマ機の横画面から縦画面にしていく作業は結構骨が折れました。
また、従来の「ダビスタ」シリーズのように、複数の馬の管理を快適に行えるかを、どのように実現するかという点などもありました。
挑戦的なことばかりで、どのセクションも手探りでの作業が続きました。ほんと、プログラム組んでくれる西村さんには迷惑かけっぱなしで。
西村:
そんなことないですよ(苦笑)。ただ、デザイナーさんにとって比較的つくりやすい環境を用意できたんじゃないかとは自負しています。ボタンの位置などをコードに埋め込んで作るやり方がよくありますが、効率は良くないやり方なので、デザイナーさんからダイレクトにレイアウトデータでもらえるよう、初期段階で環境をつくりました。
冨田:
今まで開発してきたアプリの経験から、いかに、レイアウトの実装に関してエンジニアと話を詰めておけるかが重要と感じていたので、西村さんとのコミュニケーションを多く取っていました。他のデザイナーも各々このエンジニアさんと一緒にやる、というのがわりと決まっていたので。メンバー各自が必要な相手と短時間で効率よくコミュニケーションをとれるように、席順には毎回こだわってました。そういう工夫もあって、エンジニアとデザイナーの間の壁を低くすることができた結果、終盤まで乗り切ることができました。

6. 「シリーズで一番遊ばれるダビスタ」を目指す

開発過程で「これだけはブレないように」と心がけたことは?

金山:
シンプルに「スマホでダビスタを楽しめるようにしたい」っていうのがあって、それをブラさないようにしましたよね。
冨田:
制作は基本的に不安ばっかりでした。だからこそ、コアなユーザーさんが誰なのかってことがブレなければいいと思います。
姥:
誰向けなのかっていったら、やっぱりそれは30代以上なんですよ。初期の「ダビスタ」をプレイしていたファン。スマホで初めて「ダビスタ」にふれてくれる人も大切だけど、そこに対して手厚くしすぎると、昔からのファンは不満がたまってしまう。
冨田:
初心者に優しくしすぎると競馬というものの良さや雰囲気が消えてしまうので、バランスが大事だと思います。
神谷:
コンシューマーゲームと違って、スマホだとサーバとクライアントの間で通信を挟むわけだけど、何をしても通信が走るっていうのは快適じゃないよね。だから通信をいかに減らすのかっていうことが、開発チームみんなの共通テーマ。快適さはできるかぎり追求したつもりです。
金山:
目指したのは、シリーズで一番遊ばれる「ダビスタ」にする、ということです。
例えばシナリオシーンの追加や、コザキユースケさんのキャラクターの採用、UIを極力わかりやすくするなどして、往年のファンにアピールするだけじゃなく、ユーザーの間口そのものを広げられるように工夫しました。

7. 学生時代からずっと、ひたすらプログラミング

姥:
スマホゲームのいいところって「無料だからとりあえずやってみようか」っていう敷居の低さだと思うんです。「ダビスタ3まではやってたけどその後は遠ざかっていた」という人にも、「タイトルは知ってるけどプレイしたことはない」という人にも、パッとやって「あっ面白い!」と思ってもらいたい。
だから同じゲームの中でも、ファンと初心者のちょっとした棲み分けができるように工夫しました。チャレンジモードやストーリーを用意して、競馬初心者であってもそれに沿って進めていけば大枠が学べるようにしたり、ゲーム内のことを教えてくれる施設があったり。
西村:
プログラマーとしては、それを実現するためにひたすらつくるだけです。最終的にカタチにするしかないんで。
金山:
西村さんが土日にちょいちょいとやってくれて、月曜にはできあがってる、みたいなイメージがありますよね…。ほんと、身体だけは大事にしてください(笑)。
西村:
本音ではつくることに専念したいんですよ。でも、だんだんメンバーも増えてくると平日はプロジェクトを回すのに必死で…。自分の作業は土日にやるしかない。
よく考えたら僕、大学時代も土日もずっとプログラミングしてて。結局好きなんです。ゲームづくりとプログラミングとどっちが好きかっていったら、プログラミング。

8. 「自走」こそ、ドリコムの思想

今後、どんな人にドリコムに来てほしいですか?

冨田:
うーん、僕みたいじゃない人ですかね(笑)。
神谷:
いやいや、こっちからしたら冨田みたいなデザイナーに来てほしいけど?(笑) 一般的にはゲームづくりって、プランナーが仕様決めるところから始まるけど、冨田はデザイナーの立場から「こうつくろう」って考えて、自分で人も集めてドライブできるんだよ。それって珍しい。
金山:
このプロジェクトでは、誰も「プランナーが決めてくれないと動けません」みたいなことがありませんでしたね。エンジニアもデザイナーも、必ず自分でつくった上で相談にいきました。
神谷:
難しい作品になるだろうと最初にわかったから、チームづくりの時点で、同じ目線でやってくれる人、自走してくれる人、「こうつくってみたいけどどうですか」って提案してくれる人ばかりを選んだんだよね。
金山:
結局は働く目的をどこに置くかですね。自分の担当箇所の実装だけを素晴らしくしたいとか、自分の方法論を通したい、実証したい、とかじゃなく、「ダビスタをユーザーに届けたい」っていうゴールさえズレなければ大丈夫です。
姥:
業界話としてよく聞く話ですが、仕様説明会でエンジニアから「こういうの、どうして必要なんですか?」って聞かれる事があるんですけど、そんな質問が出るのってそもそも目的共有ができてないからですよね。
『ダビマス』チームは目線が一緒だったから、「このままじゃできない」って結論になるような仕様でも「重いからここまで落として実装しましょう」とか「こういうのはどうですか」って対案が出てくる。だから手戻りが少ないし、動きが速い。みんなが自走するってことが、ドリコムの思想ですよね。
西村:
口開けて待ってまーすっていう人はいないですね。

9. 「ユーザーに届ける」を、ひたすら追求する

神谷:
サーバーエンジニアとしては、ゲームを安定的に多くの人に届ける、ということに喜びを感じる人に来てほしいなぁ。
いくらプランナーやデザイナーやプログラマーが頑張っていいゲームをつくってくれても、さが落ちたら大勢の人が遊べなくなってしまう。そのために「ここの負荷を1ミリセカンド減らそう」「いや、0.1ミリセカンド減らそう」ってひたすら追求できる人。
姥:
見えない部分だから、頑張ってるのに目立たないんですよね。
神谷:
そうそう。認知を上げていきたいんだよね。「面白い作品ができて最高!」って思う人は多いと思うんだけど、それをユーザーさんに届けるために安定稼働するサーバーアプリケーションを開発する人が絶対に必要だから。
西村:
クライアント側をつくっている僕としては、技術面と人間性のバランスがいい学生さんに来てほしい。技術については飛び抜けた人が社内に何人かいるので、実は特殊なケースにもそれはそれで対応はできるんです。でも良いものを次々と出していくには、自分のスキルを把握していてチームで頑張れる人がたくさんいないといけない。
ちょっとさわって「これ、ユーザーさんにとって体感良くないな」とすぐ気がつけて、それをメンバーにちゃんと伝えて、「こうしませんか」って改善を提案していける。そういう人が必要です。

10. 「この仕事がやりたい」と言えば、実現する会社

冨田:
デザイナーだと、ゲーム会社を受ける人の中には「自分の世界観をつくり上げたい!」ってタイプのひと多いと思いますが、大事なのはそれだけじゃないです。ゲームプロダクトはデザイナーひとりの意見だけでは完成しなくて、いろんな職種の人と一緒につくるものなので。相手の気持ちをちゃんと考えられる人が望ましいです。
金山:
まあ、ごく普通のことですけどね。
冨田:
「相手の気持ちを考える」ことができてない人って社会に相当数いるので。あとデザイナー志望の後輩には「ドリコムはやりたいことが実現しやすい環境だよ」って言いたいです。話しやすい雰囲気だし、成果を出していれば「この仕事をやりたい」って言ってる人はやらせてもらえますし。悪い会社ではないと思います。
金山:
上から仕事降ってきて、みんなバラバラに作業やるって会社ではないですよね。
冨田:
あ、でも、僕がこんな話ばっかりしてるせいで尖ったタイプの学生さんが来なくなったら…ってだんだん不安になってきました。
今後、オリジナルタイトルをつくっていくには尖っている人も必要です!
金山:
そうそう。尖ってる人でも変わっている人でも同じゴールに向かってくれる人ならば、ちゃんと居場所はある会社ですからね。

(2016年9月15日 ドリコム本社にて)

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